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580539 / Styx Strix 
 或る夏の日【前奏】 
 
蝉の声が煩く響き渡る中
 
僕達は虫籠と虫取り網を持って
 
森奥へ駆けていった 
 
森の木々は夏の到来に騒めき
 
幼い僕達に優しく囁いた
 
隙間風が濡れたTシャツを突き抜け
 
夏の苦しみを快く掻き消した 
 
やがて虫篭の中が満たされ
 
夕暮れ時が近づくと
 
日暮のほろ苦い鳴き声と共に
 
蝉が土を踠き始める 
 
シケイダな夏はこうして終わりを辿る
 
どんなに焦がれても夢は醒めてしまう
 
あの日君と担いだ虫籠の中も
 
いつの間にか綺麗になってしまっていた 
 
【間奏】 
 
君はあの日々を憶えているだろうか
 
願いが叶うならあの夏の日にまた戻ってみたい 
 
【後奏】 
 
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