552063 / 夏目漱石+mico
吾輩は猫である吾輩は 猫 である。
名前は まだ 無い。
どこで 生れたか
とんと 見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所で
ニャーニャー 泣いて
ニャーニャー 泣いて
居た事だけは 記憶して居る。
吾輩は 猫 である。
名前は まだ 無い。
どこで 生れたか
とんと 見当がつかぬ。
吾輩は ここで
初めて 人間 といふものを見た。
吾輩は ここで
初めて 人間 といふものを見た。
しかもあとで聞くとそれは 書生 という
人間中で 一番獰悪な種族であったそうだ。
この書生というのは、
時々我々をつかまえて煮て食うという話である。
しかし その当時は
何という考えもなかったから、
別段恐しいとも
思はなかった。
ただ 彼の手のひらに載せられて
スーと 持ち上げられた時、
何だかフワフワした感じが
有ったばかりである。
手のひらの上で
少し落ち付いて
書生の顔を見たのが、
いわゆる人間というものの見はじめであろう。
この時妙なものだと
思った感じが
今でも今でも
残って居る。
吾輩は 猫 である。
名前は まだ 無い。
どこで 生れたか
とんと 見当がつかぬ。
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