| 330827 / 粟栗和正 
 夢子供の頃は無鉄砲な子供だった。
塀を登って鬼ごっこ、建設現場でかくれんぼ。
 ラクビー、サッカ−、草野球。
 いつも、あちこちを走り回っていた。
 
 小学校に上がると僕は、異変に気づいた。
 足にしこりができていた。
 不思議だったが構わず遊んだ。
 いつもどおりの放課後。
 
 あるとき、事件が起こった。
 足が動かなくなり、高所から落ちてしまった。
 
 意識が戻り
 目を覚ますと病院のベットの上だった。
 母と父と友達が泣いている。
 足は完全に動かなくなっていた。
 
 とりあえず、僕は
 「大丈夫だよ」
 と微笑んだ。
 
 「テレビでも見て気を紛らわして」
 「ほら、あなたの好きな番組がやっているわよ」
 「そこからちゃんと見えるかしら」
 
 と、気を使ってくれる母。
 でも、テレビには、元気に走り回る子供の姿。
 自然と涙が溢れてきた。
 
 走りたい、跳ねたい、蹴りたい、歩きたい。
 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。
 僕の足は動かないんだ。
 肉の棒となった足に問い続ける日々。
 
 瞼を閉じると浮かんでくる。
 あの、楽しい日々。
 あの時は、思い通りに走り回れた。
 大好きなサッカー、草野球もできた。
 
 夢の中では、いつも楽しく遊んでいる。
 足があるから、夢の中では。
 夢はいいな。夢は楽しい。夢はいいな。夢は楽しい。
 夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢。
 
 目を覚ますと、足は動かない。
 願わくは、素晴らしいあの日もう一度。
 
 僕はそんな夢を抱いている。
 動かない足を抱えて
 夜空を見上げる
 
 ♪
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