| 124019 / 鬼童丸 
 かくれんぼの空へもし、体があって、目があったら、
わたしは泣いてしまっているだろう。
 だが、わたしは泣けない。
 もう、わたしは人間ではないのだ。
 
 そこに、また風が吹いた。
 ふわっと、少し浮き上がったと思ったら、
 まるで風船のように空へ流される。
 風は大きくて、わたしを空高く、どこまでも飛ばした。
 
 街が、人が、米粒のように小さくみえる。
 見上げると、手が届きそうなくらい雲が近く見えた。
 わたしは、風に運ばれていく。街へ、山へ、海へ。
 ゆっくりと流される世界に、わたしは圧倒されていた。
 
 
 わたしの思っていた以上に、
 世界は広くて、そして鮮明。
 わたしが少し前まで見ていた世界とは
 大違いだった。
 
 ぽろ、とわたしの頬を水が伝った。
 どこからだろう。
 そこで気づいた。
 わたしは、泣く方法を忘れていただけなのだと。
 
 
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