「真冬の侵略者」 霞上
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それは大きな音を立てて
静かだった部屋を蹂躙していく
冷え切った俺の部屋は
コイツの出現によって一変していた
いつも、この部屋を満たしていたのは
俺の小さな吐息だけだった
俺の小さなその部屋を
コイツは我が物顔で侵していく
コイツの吐き出す熱い吐息で
俺の部屋はコイツの領域になっていった
この、あまり大きいとは言えない俺の部屋は
余すところなくコイツの領域になっていくのだ
ああ、俺の部屋がまた少し変貌していく
ソイツが現れた時から
寒々とした空気が満たした空虚な部屋に
まるで灯がともるように温かみが戻ってく
ああ、このまま俺の部屋はコイツに蹂躙されて
俺の領域とコイツの領域が完全に混じってしまうのか
コイツは今も自らの意味を示すように
淡々と息を吐き続けている
俺は、だが俺は、コイツの侵攻を
阻害することは出来ないんだ
なぜならそれは、俺が望んだことだから
俺が招いたことなんだから
今更、それを元に戻すことはしない
俺は、大きな音を立てるソイツに近づく
ゴーっと言う大きな音を立てて
部屋を侵食するそれに手をかざして
ああ、温かいって素晴らしい
これでお部屋もポッカポカ
ああ、温かいって素晴らしい
冬はやっぱり石油ストーブ
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